私が「スポーツ現場で生きていくために」取得した資格は以下の通りです。
・理学療法士
・修士号(医科学)
・日本スポーツ協会公認アスレティックトレーナー
・Certified Strength and Conditioning Specialist:CSCS
前回は、私が最初に取得した理学療法士について説明させて頂きました。
今回は、理学療法士の次に取得した修士号について説明をさせて頂きたいと思います。
私の学歴に関しては以前紹介させて頂きました。詳しくはこちら。
修士号という「学位」を資格とみなして良いのか分かりませんが苦笑、興味のある方はご覧ください。
修士号とは
4年生の大学を卒業すると、「学士」という学位が得られます。英語ではBachelor.と呼ばれます。
同様に、大学院に進学して修士課程を修了して得られる学位を「修士号」と呼びます。英語ではMaster.と呼ばれます。
更に研究分野は文学系 (Master of Arts:M.A.)や理学系(Master of Science:M.S.)と細かく分かれていきます。
よくビジネスの現場などで出てくるMBAという言葉、これは経営系の修士号(Master of Business Administration:M.B.A.)のことです。
私は医科学系の修士なので、Master of Medical Science:M.M.Sc.だと思いますが、修士号の詳しい英語表記を調べた訳では無いので御参考までに。
ちなみに、修士号から更に博士課程を修了して得られる学位の事を博士号と呼びます。英語ではDoctor.と呼びます。お医者さんと紛らわしいですね苦笑
よくテレビで「医学博士」という肩書きを持つ方が出てきますが、あくまで「医学系の博士課程を修了した」という証であり、必ずしも医師免許を持った医師とは限らない。という事です。
私も、医学系の博士課程を修了していれば、「医学博士」と名乗れるはずです苦笑
世の中に溢れる様々な情報を整理する上でも、この辺りの背景には注意すべきだと思います。
大学院は何を学ぶ場所?
大学院の修士課程を修了すると修士号が得られる。という事ですが、そもそも大学院とは何を学ぶ場所なのでしょうか?
大学院は、学術の理論及び応用を教授研究し、その深奥をきわめ、又は高度の専門性が求められる職業を担うための深い学識及び卓越した能力を培い、文化の進展に寄与することを目的とする。
学校教育法,第九十九条,e-Gov法令検索(2022年2月10日参照)
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=322AC0000000026
なんとも崇高な言葉が並んでいますが、修士課程を修了した私が読んでも良く分かりません苦笑
とりあえず、大学院では「学術」について学ぶようなので、文部科学省が学術について述べている内容を以下に引用します。
学術は、「研究者の知的探究心や自由な発想に基づき自主的・自律的に展開される知的創造活動(学術研究)とその所産としての知識・方法の体系」であり、人類の知的探求心を満たすとともに、それ自体が知的・文化的価値を有するものである。
第1章 学術研究の特性と学術を巡る状況の変化,文部科学省(2022年2月10日参照)
https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/gijyutu/gijyutu4/siryo/attach/1324751.htm
学術とは、研究に関する事のようですね。ここまで行くと大学院は「研究について学ぶところ」だとイメージ出来るのではないでしょうか?
おそらく、大学や専門学校でも「卒業研究」という形で研究について学ぶ事はあるかと思います。
しかし、研究について専門的に学ぶには大学だけでは時間が足りないので、大学院で研究について学ぼう。
という事だと私は考えています。
大学院に進学した理由
私が大学院に進学した理由は、医療従事者・トレーナーとして「根拠に基づいた実践」を学ぶためです。
医療の現場では「根拠に基づいた医療」という言葉あり、英語ではEvidence-Based Medicine:EBMと呼ばれています。
この根拠というのが、いわゆる様々な研究という事になります。私の所属する日本理学療法士協会では、EBMについて以下のように説明されています。
個々の患者の臨床問題に対して、(1)患者の意向、(2)医師の専門技能、(3)臨床研究による実証報告を統合して判断を下し、最善の医療を提供する行動様式
EBMとは,公益社団法人 日本理学療法士協会(2022年2月10日参照)
http://jspt.japanpt.or.jp/ebpt/ebpt_basic/ebpt01.html
この説明、一見難しく感じますが、この内容を私は気に入っています。
様々な問題に対して、患者の意向を無視した対応をとる事は許されません。
医療者が患者に必要な情報を伝え、治療法方針について納得し同意が得られたうえで治療に臨む「説明と同意」informed consent(インフォームド・コンセント)という考え方があります。
このような患者の人生に関わる決断をする際に根拠となるものの一つが、研究を元にした情報(エビデンス)であるという事です。
このような説明をすると、医療従事者は研究報告だけを参考で治療方針を決めるのか?と思われる方もいるかと思います。
しかし、EBMとは研究報告だけで治療方針を決定する考えではありません。あくまでも、研究報告は患者との「説明と同意」に臨む上での判断材料の1つです。
その為には、研究報告を重要視するのと同じくらい、研究報告を鵜呑みにしないよう疑う事も重要です。
EBMという医療の分野に関わる話ではありますが、「根拠に基づく」という部分は、どんな分野においても必要だと私は思います。
EBMを幅広くとらえられるように、もう少し広い概念で「根拠に基づいた実践」Evidence-Based Practice:EBPと呼びます。
医療従事者・トレーナーとして「根拠に基づいた実践」を行うためには、EBPの1つの要素である研究について正しく理解しなくてはいけません。
このような理由から、私は大学院に進学する事を決めました。
私は大学院で何を学んだのか?
私は理学療法士として働きつつ、社会人大学院生として研究について様々な事を学ばせて頂きました。
しかし、私が学ぶことが出来たのは「研究に関するほんの一部」のことです。
大学院の修士課程のメインの内容は、「非常に限られたテーマを1つ決めて、2年間かけて研究に取り組む」という部分だと思います。
私も「足部内在筋と足圧中心」という、ちょっと何言ってるか分からないようなテーマを定めて苦笑、2年間かけて論文を1つ書き上げました。
しかし、私は修士課程を通して「学術の深奥をきわめる」なんてことは、とてもじゃないができませんでした。
2年間、毎日のように「学術はなんて幅広く、奥深いんだ!」と痛感させられるばかりでした。
私は修士課程を修了したからと言って、「自分は研究者である」とは思っていないし、そんな事を言える立場ではありません。
やはり研究者としてスタートラインに立つためには博士課程に進まないと「見えてこない部分」が沢山あるのだろうと思います。
博士課程の方々、博士号を持つ方々、大学の教員の方々、心から尊敬しております。
しかし!私も2年間しんどい思いをしながら、職場に迷惑をかけながら、タダで帰るわけにはいきません苦笑
上で説明した「根拠に基づいた実践」を行うために、修士課程を通して「研究の基本中の基本」を学んできました。
具体的には「様々な研究論文を読み解くこと」に関して、指導教員の厳しくも温かい御指導のもとで鍛え上げられました。
自分自身が研究を行う点に関しては未熟ですが、研究に関する情報(研究論文)を正しく理解する事に関しては、私が大学院での学びを通して自信を持てるようになった事の1つです。
さいごに
今回の話は、あくまで大谷の個人的な内容です。大学院については様々な考え方があるかと思います。
少なくとも私は、大学院で修士号という肩書が欲しかった訳ではありません。
あくまでも、「根拠に基づいた実践」のために「研究(論文)について正しく理解できるようになる」事が私の目的でした。
大学院で学んだ具体的な事柄に関しては、今後少しずつご紹介していきたいと思いますので、どうかよろしくお願いいたします。